古い塗装を傷つけない洗車の鉄則|特別な相棒と10年後も輝くために、プロが全解説
あなたにとって、その絶版中古車はただの古い車ではないはず。特別な思い入れのある、大切な”相棒”なのではないでしょうか。
「いつまでも、この車を最高の状態で乗り続けたい」
そのために、まずは自分の手で綺麗にすることから始めたい。でも、いざやろうとすると、「正しいやり方って?」「どんな道具が必要?」「もし傷つけたら…」と、不安になりますよね。
この記事は、そんなあなたのための「洗車の教科書」です。 私自身、一台の中古車に夢中になり、どうすれば価値を守れるのかを探求した結果、洗車を仕事にしました。その経験から言えるのは、「なぜそうするのか?」という理由さえ理解すれば、洗車は決して難しくないということです。
この記事を読めば、初心者でもプロのように、理にかなった洗車ができるようになります。さあ、あなたの手で愛車の価値を守り、輝かせるための第一歩を踏み出しましょう。
- どこから始めていいかわからない
- 何の道具が必要かわからない
- いつ洗車すればいいかわからない
- 洗車の手順がわかる
- 必要な道具がわかる
- 洗車の最適な頻度がわかる
- 古い車を洗車する時のNG行動がわかる
なぜ「手洗い」なのか?愛車の塗装を守るための基本知識
まず大前提として、なぜ絶版車や古い車は「手洗い」が良いのでしょうか。
車の塗装は、一番上に「クリア層」という、ツヤを出し色を守るための透明な保護膜で覆われています。
絶版車、ネオクラ車の場合、年月を経てこのクリア層が少しデリケートになっていることが多いのです。
そこに、硬いブラシを持つ自動洗車機を通すとどうなるか。 目に見えない細かい砂を引きずったブラシが、塗装を擦ってしまい、太陽光に当てると見えるクモの巣のような無数の細かい傷(洗車傷)だらけになる可能性があります。
大切な愛車のオリジナルの塗装を守る。そのために、自分の手で優しく洗うことが最良の選択肢というわけです。

目的で選ぶ、失敗しない洗車道具リスト
道具選びは、洗車の成否を左右する重要なポイントです。
ここでは、
「これを買えば間違いない」というだけでなく、「何のために、それが必要なのか」という理由と共に、僕が実際に使って納得したものだけを紹介します。
【基本の装備】まず揃えたい7つのアイテム
- ホース
- 役割: すすぎ残しを防ぎ、作業をスムーズに進める。
- 選び方のポイント: おすすめは内径12mm。細いホースだと水量が足りず、シャンプーを流すのに時間がかかり、水シミの原因になります。タカギの「マーキュリーⅡツイスター」のように、ホースが絡まりにくい工夫がされたものを選ぶと、後々のストレスがありません。
- カーシャンプー
- 役割: 塗装に優しく、汚れを安全に浮かせる。
- 選び方のポイント: 成分表に**「中性」「ノーコンパウンド(研磨剤なし)」**と書かれたものを選んでください。シュアラスターの「カーシャンプー1000」などが定番です。洗浄力が強すぎるものや、塗装を削る研磨剤入りのものは、デリケートな絶版車の塗装にはリスクがあります。
- バケツ + グリッドガード
- 役割: 砂や泥が、再びボディに戻ってくるのを防ぐ。
- 選び方のポイント: 「グリッドガード」は、一見ただの網の板ですが効果は絶大です。洗車中に汚れたクロスをすすぐと、水の中に砂や泥が混じりますよね。この板がバケツの底に汚れを沈め、舞い上がってくるのを防ぐ「仕切り」の役割を果たします。これがあるだけで、洗車傷のリスクを劇的に減らせます。
- マイクロファイバークロス
- 役割: スポンジの代わりに、塗装へのダメージを最小限に抑えて洗う。
- 選び方のポイント: プロの現場では、洗車にスポンジを使いません。なぜなら、スポンジは汚れを内部に溜め込んでしまい、気づかぬうちに砂でボディを擦ってしまうからです。その点、コストコの「カークランド」のようなマイクロファイバークロスなら、汚れたら面を変え、気兼ねなく交換できるので、常にクリーンな状態で洗えます。
- 大判ドライニングタオル(拭き上げ用)
- 役割: 水シミができる前に、素早く水分を拭き取る。
- 選び方のポイント: 洗車後のボディに残った水滴は、乾くと「水シミ(イオンデポジット)」という厄介な跡になります。これは水道水に含まれるミネラル分が焼き付いたもの。SHSCLYなどの大判タオルは、置くだけでゴソッと水を吸ってくれるので、ゴシゴシ擦る必要がなく、時短にもなり、シミと傷の両方を防げます。
- ホイール用ミット
- 役割: 複雑な形のホイールを、隅々までしっかり洗う。
- 選び方のポイント: 手袋のように手にはめて使うミットタイプがおすすめです。指先の感覚で、スポークの裏側やナットの周りなど、普通のスポンジでは届きにくい場所も的確に洗えます。
- 簡易コーティング剤
- 役割: 洗い終わったボディを保護し、ツヤを出す。
- 選び方のポイント: 洗車後の塗装面は、綺麗ですが無防備な状態。WAKO’sの「バリアスコート」のような初心者でも扱いやすいコーティング剤で仕上げておくと、**塗装の保護膜となり、汚れが付きにくくなります。**結果的に、次回の洗車がとても楽になります。




愛車を傷つけないための洗車手順
道具が揃ったら、いよいよ実践です。各ステップの「目的」を意識しながら、焦らず丁寧に進めましょう。
準備:洗車を始める前に
洗車は、直射日光の当たらない「日陰」で、気温が高すぎない「朝か夕方」に行うのが鉄則です。
炎天下で作業すると、シャンプーや水滴があっという間に乾いてしまい、シミの原因になります
- 直射日光の当たらない「日陰」
- 炎天下を避けて「朝か夕方」
ボディが熱くならない&水や洗剤が乾かない環境で洗車しましょう
ステップ1:ホイール洗浄
汚れがひどい部分を先に洗い、綺麗なボディへの飛び散りを防ぐ
まずは、最も汚れている足回りから
ホイールとタイヤに水をかけ、ミットで洗浄します。
ボディを洗った後にホイールを洗うと、泥水がボディに跳ねて二度手間になるのを防ぐ、合理的な順番です。

ステップ2:予備洗浄(プレウォッシュ)
ボディに触れる前に、傷の原因となる砂やホコリを水圧で飛ばす
ルーフ(屋根)から下に向かって、シャワーで優しく、しかし念入りにボディ全体の汚れを洗い流します。
シャンプーで洗う前に、どれだけ汚れを落とせるかが、洗車傷を防ぐ最大のコツです。

ステップ3:シャンプー洗車
泡のクッションを利用して、優しく汚れを浮かせる。
バケツでシャンプーをよく泡立て、マイクロファイバークロスにたっぷり含ませます。
力を入れず、ボディの上を一方通行でスーッと滑らせるように洗います。ドア1枚など、パネルごとに区切って進めるのがおすすめです。

ステップ4:クロスの洗浄
汚れをリセットし、傷の原因を引きずらない
1パネル洗い終えたら、その都度バケツでクロスをしっかり濯ぎます。
グリッドガードに擦り付けるようにすると、繊維の奥の汚れまで落ちます。この一手間を惜しまないことが、仕上がりの差に繋がります。
ステップ5:すすぎ
シャンプー成分を残さず、完全に洗い流す
再びルーフから下へ、たっぷりの水で洗い流します。
ドアミラーの付け根や窓枠のゴムの部分、ワイパー周りは泡が残りやすいので、特に意識してすすいでください。

ステップ6:拭き上げ
水シミの発生を完全に防ぐ
大判のドライニングタオルを広げてボディに乗せ、タオルの端を持って手前に引くように水分を吸わせます。
ボディサイドなど、タオルが地面に付きそうな場所は、四つ折りにしたマイクロファイバークロスで優しく拭きましょう。
ステップ7:保護と仕上げ(簡易コーティング)
塗装面を保護し、美しいツヤを与える
ボディが完全に乾いたら、簡易コーティング剤を施工します。
清潔なクロスに少量スプレーし、薄く塗り伸ばして乾拭きするだけでOK、見違えるような輝きが手に入ります
まとめ:正しい知識は塗装を守る、最高の愛情表現になる
お疲れ様でした。 正しい手順と理由を知って行う洗車は、もはや単なる作業ではありません。それは愛車の状態を自分の目で確かめ、その価値を未来へ繋ぐための対話の時間です。
愛車の状態を把握できるようになれば維持だけでなく、ワンランク上の綺麗さを目指すことも出来ます。
今回身につけたスキルは、あなたのカーライフをより深く、豊かなものにしてくれるはずです。
まずは基本をマスターし、あなたと愛車の時間を楽しんでください。

